蹴遊記

スポーツとしてのサッカーだけでなく、文化としてのフットボールについて書いたり……

ロシアへのモチベーション part1

さあ、荒れに荒れているハリルホジッチの解任騒動。ロシアへ行く身としては、かなり心を折られてしまいました。それでも、キャンセルするくらいなら、行ったほうが値段的にも経験的にももちろん良いので行くのですが...

それでも、なかなかどういったモチベーションでロシアに乗り込めばいいのか分からず、心の整理のためにもロシアへのモチベーション向上のためにも主に自分用に書き残しておきたいと思います。

 

1.そもそも何が問題なのか
さてさて、ハリル解任に対してなぜここまでショックを受けているのでしょうか。結果が残せていない監督を解任し、所謂「解任ブースト」でW杯を乗り切る。別に悪くはなさそうですよね。実際、「サッカー好き」を自称する周囲の人たちは、この解任に対して肯定的。(というよりも、どこか斜に構えた感じでしたが、、)しかし、自分のタイムライン上ではもちろんのように全員が否定的でした。

 

・ハリルの戦略
今回のw杯に向けてハリルホジッチは恐らく、最初に相手に合わせた戦術や対策を用意、そのうえで3月のヨーロッパ遠征までをテスト、それ以降メンバーを絞るという段階を踏むんだろうなということは12月のE-1や、3月のヨーロッパ遠征のメンバーで想像することはできました。そうした、ハリルのロシアに向けた戦略を協会側は理解していなかった、もしくは、そうした方針が受け入れられなかったために、解任に踏み切りました。しかし、協会側が委ねた以上、監督の方針を尊重することが第一。その関係が逆転し、「w杯素人」のJFAの偉い方々が、ある程度世界での戦い方を熟知した監督を解任することにはかなりの違和感を感じました。

 

・目先の結果を追い求める協会
ハリルの戦略を受け入れなかったことに加え、もう一つ重大なポイントが「今回のロシア大会で何を求めるか」という視点です。「ロシアで求めるもの?もちろん結果でしょ?」な人が多数だと思いますが、実はこれは「ハリルJAPAN」の目標であり、「日本サッカー」の目標ではないのだと僕自身は考えます。「ハリルJAPAN」は先述の通り、ロシアに向けて積み上げてきたのですから、ロシアで結果を求めることは必然的であり使命です。しかし、日本サッカーを主語にすると、今大会はあくまでも通過点。そのずっと先にゴールがあるはずです(ゴールは恐らく永遠に訪れません)。日本サッカーを主語として考えたとき一番重要な課題は目先の結果よりも、未来の安定した強さなのだと感じます。ロシアでいくら偶然的に結果を残せたとしても、10年後,20年後にはW杯にさえ出ることができないという状況ではどうでしょうか。環境問題的に言うと、目先の利益と持続可能な社会を維持することで得られる総利益、この二つを選べと言われ、協会は前者を選んでしまったのです。Jリーグでもよく、方向性の定まらないチームに対して、「ヴィジョンを示せ」という声が出ます。その意味はこれなんです。自分たちの明確な形がない日本は、「海外から経験のある監督を招いて毎大会ごとに評価し、次につなげる」という謙虚な姿勢で今大会も望むべきだったと思います。しかし、目先の結果を優先したために今回のロシア大会では、戦略が正しかったのか否か、などのような有効な評価は不可能になっていしまいました。(勝っても負けても得られるものは何もありません)これで、最高成績を残し、解任ブーストに活路を見出してしまったら。。。と考えると鳥肌が立ちます。

 

・「自分たちの形」にとらわれ続ける日本
最後に、選手たちが言ったとされる「自分たちのサッカー」について触れたいと思います。自分はサッカーの素人ですから、戦術は一文字もわかりません。それでも、「日本のサッカー」がないことはわかります。イタリアならカルチョ、ブラジルならジンガみたいな「色」が日本にはありません。選手たちはぼんやりと「つなぐサッカー」を志向しているようですが、「つなぐサッカー」のなかには様々な「つなぎ方」があるわけで、そこを無視して「つなぐ」ことを志向しても意味あるの?とは思います。まだまだ途上国な日本に求められるべき態度は「まず先進国に学び、徐々に自分たちの形を作る」ことだと思います。洞窟でなんのヒントもないまま、根拠なき自信を基に道を進んでも意味がありません。ある程度の洞窟の歩き方を学んでから、根拠のある自分に合った方法をとるほうが合理的なのは自明です。そして、この「根拠」こそ、「海外の監督を招き、W杯を乗り越えることで得られるもの」だと思います。根拠を捨てて、奇跡を信じる。新監督が「マイアミの奇跡」で紹介されているあたり、かなり象徴的だなと感じました。

 

2.どうすればよいのか
ではでは、この「目先の結果」を追い求める近視な日本サッカー協会はどうすればよいのでしょう。一つだけ具体的に触れておきたいと思います。

 

・柱をつくる
先ほど触れたように、日本サッカーでは「つなぐ」ことが理想的とされているように感じます。(風間さんが評価されているのもここからかと)しかし、つなぐサッカーには必ず、「つなぎ方」があります。「ひし形」を作ったり「人が動くことでできるスペース」を使ったりと色々なアプローチがあるはずです。そうした「つなぎ方」を育成年代から、標準装備させることが必要だと感じます。例えばドイツでは、指導者ごとに多種多様なスタイルを志向するものの、「1vs1」の部分では負けないということを誰もが教え込まれるようです。(ってテレビで見ました)このような、国全体で共有された軸のようなものを協会主導で形成することはかなり重要だと思います。この軸がやがて柱となり、「自分たちのサッカー」を支えてくれるはずです。

 

 

このように今回の解任報道は「あり得ない」の感想しか浮かびませんでした。解任するという噂はありましたが、全く本気にしていませんでした。(アメリカでトランプが大統領になった時と同じような感覚でした)。それでも、ロシアにはいきます。矛盾しているようにも思えますが、これには自分の中にある「応援側」の心理が関係しています。ということで、「ロシアに行く意味」についてpart2では触れたいと思います。